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組織生産性の高め方

組織生産性の高め方

組織の生産性を高めたい。これは、どの組織にも共通する課題ではないでしょうか。実際に、本屋に足を運べば個人・組織を問わず生産性の向上に関する本が多く並べられています。

組織の生産性を高める方法は様々ですが、今回は、組織構造の見直しや業務改革といった外科手術的なアプローチではなく、組織における人間関係やコミュニケーションの改善といった漢方治療的なアプローチで生産性を高める方法をご紹介します。

そもそも組織の生産性とは?

組織の生産性は、以下の式で表すことができます。

生産性=組織の潜在的生産性―プロセス・ロス+プロセス・ゲイン

それぞれの言葉の定義は以下の通りです。

・潜在的生産性
組織を構成するメンバー1人ひとりがもつ潜在的に持っている生産性です。ある人が1人で作業した際に発揮できる生産性を指します。

・プロセス・ロス
複数人で作業することでグループの生産性が1人ひとりの潜在的生産性の総和よりも下がる現象を指します。たとえば、ある人が、グループのリーダーを信頼していなかったり、担当業務の意味を理解できていなかったりすると、本来発揮できる実力(潜在的生産性)を出せないかもしれません。これがプロセス・ロスにあたります。

・プロセス・ゲイン
プロセス・ロスの対となる考え方です。グループにおけるメンバー間の相乗効果により実際の生産性が潜在的生産性を超える現象を指します。たとえば、日常的な情報共有から新しいアイディアがうまれたり、お互いの強みを理解し、強みを生かして業務分担することで機械的な分担では達成できないようなことが実現できたりします。

組織の生産性とは、1人ひとりの潜在的生産性がグループになることで失う生産性(プロセス・ロス)とグループになることで得られる生産性(プロセス・ゲイン)の総和になります。つまり、組織の生産性を高めるためには、プロセス・ロスよりもプロセス・ゲインを大きくすることが必要となります。

生産性を高めるためのアプローチ

上述した式に沿って組織の生産性向上を考えると、組織の生産性を高めるには以下の2つのアプローチがあります。

①プロセス・ロスを減らす

プロセス・ロスを減らすのに有効なアプローチは、組織に誤解のない状態をつくるということです。組織における誤解は大きく「仕事に対する誤解」と「メンバーに対する誤解」があります。

「仕事に対する誤解」とは、組織のゴール、自分の仕事のゴールが不明確で、仕事で求められていることと自分が認識している仕事にギャップがある状態を指します。この誤解への対策は、ゴールとルールの明確化になります。何を目指すのか、そのためにどのような役割や業務があり、その業務を遂行するための社内ルールなどが明確になっていれば仕事に対する誤解は少なくなります。

「メンバーに対する誤解」は、自分が認識しているメンバーと実際のメンバーにギャップがある状態を指します。基本的には自分の思い込みによって誤解が生じるため、誤解をなくすためには、「相手を知る」ことが有効になります。

相手を知るうえでのポイントは、「性格」「得意な情報処理の方法」「これまでの人生・キャリア」を知るということです。性格は、その人の行動の傾向を表しますし、文字での情報処理に長けている人もいれば、耳からの情報処理が得意な人もいます。また、これまでどんなキャリアを経たかを知っていれば、相手の発言の背景や意図も理解しやすくなります。

相手を知るための方法には、組織開発のワークショップやタレントマネジメントシステム、社内SNSの活用などがあります。

②プロセス・ゲインを高める

プロセス・ゲインを高めるうえで有効なアプローチは、協働を促進する仕組みをつくるということです。協働を促進する仕組みには、「ギャップを把握する仕組み」「役割を超えた行動を推奨する仕組み」があります。

「ギャップを把握する仕組み」というのは、ゴールや求められている成果と現状を組織レベル、個人レベルの両方で可視化する仕組みを指します。組織が目指している方向に向かっているか、個人ごとの目標の進捗状況や業務の遂行状況に問題がないかということを、すべてのメンバーが理解できていれば、誰かが困っているときに他のメンバーが支援行動をとりやすくなります。

この組織レベル、個人レベルで可視化されたギャップの解消に向けて、各メンバーが支援行動を取ることを「役割を超えた行動」と言います。役割を超えた行動を推奨するには、この役割を超えた行動を称賛することが有効になります。たとえば、役割を超えた行動が多い人を表彰する、役割を超えた行動に対してボーナスを支給するなどがあります。サンクス・カードなどで感謝を伝えるような取り組みも、この「役割を超えた行動を推奨する仕組み」の1つでしょう。

さいごに

何かを改善する場合、やみくもに施策を押し並べても期待した効果が出ないことが少なくありません。ここでまとめたとおり、組織の生産性向上においても、事前に何を改善する施策かを明確にしておくことが大切です。ここでの内容を組織の生産性を高める施策の参考にしていただけると幸いです。

組織の生産性向上に対して、何に対して施策を打つかを事前に検討することが必須です。現在の組織の状態を踏まえ、どのようなアプローチが取れそうかを検討してみてください。

(参考文献:入門 組織開発 中村和彦)

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