代表取締役 / 中村 洋文 様
訪問介護・看護、介護実務者研修事業を展開しているOne-or-Eight合同会社。今回は、THANKS GIFTについて、代表取締役である中村洋文様にお話を伺いました。
故郷の離島医療の現実と栃木への異動、そして被災した経験から事業設立
-はじめに、事業設立の経緯についてお聞かせ下さい。
中村 様:
事業設立の前に、まずは私の生い立ちからお話したいと思います。
私は、鹿児島の離島で生まれました。そこは、ケガや病気になった際、治療のために3~4泊かけて本島に行く必要がある環境でした。私自身も幼少期に皮膚病の治療のため本島に通っていましたが、体力的にも精神的にもかなりの負担でした。さらに、祖母も奄美大島の大きな病院に入院することがあり、小さいながらに「これは何とかしなければ」と離島医療に課題を感じていました。
地元の高校を卒業後、親戚がいる沖縄の大学を卒業。介護職からスタートし、病院や知的障がい者施設、デイサービスなどを経験した後、市役所で介護保険に関わる公務員として経験を積みました。ただ、働いているなかで「もっと違う知識があれば」「あの時もっと患者さんに尽くせていたら」という思いが拭えず、理学療法士の学校に入り直すことに決めました。
晴れて理学療法士となった後は、沖縄の離島を周り、離島医療を学びました。地元に帰った後も理学療法士として働きましたが、なかなか理想通りにはいかないのが現実です。そんな折に、栃木の病院の事務長さんから声をかけていただく機会がありました。しかし、ちょうど同時期に福島の病院からも声をかけていただいており、福島へ行くことを決めていたところでした。
しかし、「福島へ行く前に一度栃木に行ってみよう」と思い立ち、2010年11月に初めて栃木を訪れました。
栃木の環境は、地元の離島にとてもよく似ており、私は急遽栃木で働くことに決めました。栃木で働いてからも福島の病院の事務長さんとは関わりがありましたが、同年の3月11日の大震災を境に、連絡が取れなくなってしまいました。今も連絡は取れないままです。
あの時、福島に行っていたら。
栃木を選択した自分は「生かされている」と強く感じました。「生かされてここに来たのなら医療をもっとより良くしなければ」と決意しました。
栃木で働くにつれて、「陸続き」だからこそ医療との距離が遠くなっていることに気付きました。離島は「離島だから」と力を入れている部分がありますが、一方で陸続きの地形では「いつか行こう」という気持ちからサービスの提供が遅れてしまいやすいようです。
このような状況を目の当たりにし、医療の提供が早急にできるようにと、起業を考えたました。
「訪問介護」業界の課題と自社のコミュニケーション課題解決のために導入を決意
-では、実際に事業を始めて感じた業界の課題感についてお聞かせ下さい。
中村 様:
やはり、一番は「コミュニケーション不足」でしょう。
介護や看護の領域から「訪問」業界に入ってくる方のなかには、コミュニケーションで得た「成功体験」がある方が多くいます。
例えば、高齢者の利用者さんに「ありがとう」と声をかけてもらうことがやりがいとなっている方も多いでしょう。また、施設や病院は、物理的に一人になることもありません。
しかし、「訪問」介護業界では物理的に一人になることがあります。今まで経験したコミュニケーションから得られる「ぬくもり」や「温かみ」がいきなり途絶えてしまう。
このような現状がある限り、訪問介護業界を目指す人の減少や、離職の要因になると考えています。有限の人的リソースを確保するために、本来であれば業界全体で取り組むべきことのはずです。私は業界を変えたいという気持ちから、まずは「自社から変えていこう」と決意しました。
-THANKS GIFT導入前の御社の課題と、導入の決め手についてお聞かせ下さい。
中村 様:
一番は、文字ベースのコミュニケーションによる「ボタンの掛け違い」でした。
コミュニケーション不足になることは起業前から予想がついていたため、対策のために社内SNSを導入していました。SNSといっても、当時のツールはスタンプ機能などが無かったので、業務連絡をする「アプリ版社内メール」みたいな感じですね。
しかし、ツールを利用していくなかで「ニュアンス」が伝わらないという課題が浮き彫りになっていきました。文字情報だけではニュアンスや感情が伝わりません。そのため、どうやって受け取られているか分からない。そこから恐怖心が生まれ、勘違いが起こってしまったのです。
一度ボタンが掛け違えられてしまうと、ズレはどんどん広がっていくものです。
実際に、「管理者とのコミュニケーションが上手くいかない」という相談を直接受けたこともあります。退職した社員を見て、自分のなかで決心しました。
それから、コミュニケーションの基本である「感謝」を伝えられ、適切なタイミングで適切な称賛を与えることができる方法を模索し、THANKS GIFTに出会いました。コミュニケーションが取れることに加え、社内通貨制度があること、称賛の場が第三者からも見れることに惹かれ、導入に至りました。
「新しいモノ」を積極に取り入れる文化により社員の自主的な運用が実現
-御社は導入に関して比較的スムーズに進んだと思うのですが、その要因についてお聞かせ下さい。
中村 様:
業界では、まだまだ保守的な部分が多くありますが、私は新しいものをどんどん取り入れていく姿勢でいるため、社員も「またか。じゃあやってみよう」と、ついてきてくれたのだと思います。
また、THANKS GIFTが立場関係なく、「双方向からのコミュニケーション」が可能ということも要因だと感じています。一般的に、承認・称賛というと上から下への一方通行になりやすいですが、コミュニケーションは双方向から発生しないと成り立ちません。
私が職員によく話している言葉に、「啐啄同時(そったくどうじ)」というものがあります。これは、雛が生まれる直前、雛が卵を割る音聞き、親鳥も同時に卵をつつくということを表した言葉です。
私は、コミュニケーションはこういう形であるべきで、介護は「上からも下からも介していくもの」だと考えています。THANKS GIFTは、この考え方にまさにピッタリだったのではないでしょうか。
さらに、運用は、各役職者が自部署のミーティングの際に意見出しを行い、自走している状態です。使い方に関して、私が意見をしなくても、自主的に取り組んでくれています。
ただ、「自己開示」という部分に関しては、どうしても時間がかかります。そのため、今後も自分を含めた役職者が率先して行って、見本を示していけるようにしたいです。
ポジティブコミュニケーションの活性化・見える化によって理想の組織へ、さらに採用面にも大きな変化が。
-では、THANKS GIFTを使い始めて感じた変化についてお聞かせ下さい。
中村 様:
「双方向のコミュニケーション」をコインで表せることに、非常に魅力を感じています。ポジティブなコミュニケーションが生まれ、それが見える化できているのは、ありがたいです。
最終的にはツールを使わなくなっても現状を維持できるのが理想ですが、まずは文化醸成の一歩を踏み出せたのではと思っています。数値化できない部分ですが、社員の笑顔が多くなったようにも感じます。
また、採用面でも大きな変化が見られました。会社情報のアウトプットをYouTubeなどの手法に変えたのをきっかけに、THANKS GIFTについても言及してみました。
私のSNSでも少し触れてみると、多くの人に興味を持っていただけたのです。これにより、弊社のホームページや情報を見てくれているのか、理念を理解しているのかという部分が把握しやすくなりました。
実際、面接でもTHANKS GIFTに言及してくれた方がいました。理念や社風をキャッチしてくれている方が多くなったので、面接時の進行もずいぶん楽になりました。
相互理解した上でのスタートができるため、「呼び水」どころではないなと思っています。
・THANKS GIFTによって採用時の相互理解が深まり、面接希望者が約1,4倍増加
※2020/4~2020/7 の面接者は 14 人⇒2021/4~2021/7 の面接者は 27 人
新規事業に向けユニークなTHANKS GIFT運用でさらに社員のチャレンジ精神を醸成
-今後予定している運用方法についてお聞かせ下さい。
中村 様:
今までとは逆転の発想で、「試用期間中の職員はコインの贈呈ができない」という取り組みを計画しています。「全員が使えるプラットフォームだけど、機能すべてを使えるのは試用期間をクリアした職員だけにする」ということです。
つまり、「楽しいTHANKS GIFTを使いたいのであれば、頑張って試用期間をクリアしましょう」という、THANKS GIFTのステータス化です。
この案を職員から聞いた時、私も非常に驚き、「なぜなのか」という理由を根ほり葉ほり聞きました。理由のなかには、「自分たちでTHANKS GIFTの価値を高めよう」という想いがあり、とても嬉しく感じました。自分たちで、THANKS GIFTへの取り組みを昇華して、さらにステップアップしている。このように、失敗しても良いから、職員達には新しいことに挑戦していただきたいですね。
-最後に、今後の意気込みについてお聞かせ下さい。
中村 様:
来年に向けて、新事業が動き出そうとしています。今は訪問介護・看護を行っていますが、「治療して元気になったら終了」というような部分がどうしてもありました。
これからは、元気になった先のことにもお付き合いできるように、就労支援もやっていきたいと計画しています。
おじいちゃんもおばあちゃんも、障害を抱えていても抱えていなくても、就労の部分にチャレンジしていける環境を目指します。たとえ失敗したとしても、それを踏み台にしてブラッシュアップできるのであれば、その失敗も発信していこうと思っています。業界をよりよくしていけるよう、来年ももっと「失敗」していこうと思っています!
-本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!