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介護業界の人手不足解消法は?背景や原因、対策や事例を紹介

介護業界の人手不足解消法とは?背景や原因、対策や事例を紹介

介護業界は少子高齢化に伴い、需要はかなり増えているものの、人員の供給が追い付いておらず、人手不足の状況に陥っています。
政府としても賃金を底上げするなどの対策を行っていますが、まだまだ状況は好転しておりません。
今回は、介護業界の人手不足の状況やその背景、対策・事例などを紹介します。

介護業界の人手不足の状況

近年、慢性的な人手不足が社会問題化しています。
特に介護業界は、その影響を大きく受けている分野の一つです。
公益財団法人介護労働安定センターの「令和5年度介護労働実態調査結果」によると、事業所全体の職員の過不足感は「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計が64.7%に上っています。
また、より深刻な不足感を意味する「大いに不足」と「不足」の合計でも34%です。
今後は、2022年の215万人と比較して、2026年度には約240万人(+約25万人)、2040年度には約272万人(+約57万人)必要になると推計されています。

日本全体の人手不足の状況

日本全体の人手不足の状況について紹介します。
帝国データバンクが調査・公表している「人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)」によると、2024年7月時点における全業種の従業員過不足状況は以下の通りです。

  • 正社員が「不足」と感じている企業の割合:51.0%
  • 非正社員が「不足」と感じている企業の割合:28.8%

正社員は、前年同月比で0.4%低下しているものの、依然として5割を上回るなど高止まりが続いています。
非正社員は、前年同月から1.7%低下し、7月としては2年ぶりに3割を下回っています。

地方の介護施設の人手不足の状況

地方の介護施設における人手不足の状況を都道府県別有効求人倍率を元に紹介します。

都道府県 有効求人倍率 都道府県 有効求人倍率
北海道 5.57 倍 滋賀県 4.08 倍
青森県 2.56 倍 京都府 2.83 倍
岩手県 4.41 倍 大阪府 5.43 倍
宮城県 4.86 倍 兵庫県 9.71 倍
秋田県 8.71 倍 奈良県 6.76 倍
山形県 5.34 倍 和歌山県 3.97 倍
福島県 4.43 倍 鳥取県 3.58 倍
茨城県 7.20 倍 島根県 3.68 倍
栃木県 6.54 倍 岡山県 2.27 倍
群馬県 4.02 倍 広島県 3.96 倍
埼玉県 6.36 倍 山口県 2.24 倍
千葉県 5.83 倍 徳島県 1.87 倍
東京都 3.63 倍 香川県 1.60 倍
神奈川県 8.29 倍 愛媛県 6.55 倍
新潟県 6.55 倍 高知県 2.55 倍
富山県 2.93 倍 福岡県 10.52 倍
石川県 3.38 倍 佐賀県 1.90 倍
福井県 2.83 倍 長崎県 4.33 倍
山梨県 7.81 倍 熊本県 8.45 倍
長野県 4.87 倍 大分県 9.77 倍
岐阜県 9.70 倍 宮崎県 5.31 倍
静岡県 3.33 倍 鹿児島県 9.06 倍
愛知県 4.29 倍 沖縄県 3.47 倍
三重県 11.92 倍

都道府県別の有効求人倍率では、1.60倍から11.92倍までと大きな格差があります。
また、21都道府県で有効求人倍率が5倍を超えていることからも、介護業界の深刻な人手不足の状況が見て取れるでしょう。

参考:社会福祉法人 全国社会福祉協議会 中央福祉人材センター|令和5年度 福祉分野の求人求職動向

介護業界で人手不足に陥っている背景

介護業界はなぜ人手不足に陥っているのでしょうか。
介護業界が人手不足に陥っている背景を紹介します。

若者の労働力人口の減少

介護業界が人手不足に陥っている背景として、まず少子高齢化による労働力人口の減少が挙げられます。
年を追うごとに高齢者が増加している一方で、出生率は減少の傾向にあり、生産年齢人口が1995年の8,716万人から2023年には7,395万人まで減少しています。
今後も減り続けると見られ、2030年には7,076万人まで減少する見込みとなっています。
減り続ける労働人口に対して、介護が必要となる高齢者は増えているため、介護業界の人手不足がより深刻なものになっているといえるでしょう。

採用競争力が弱い

介護業界が人手不足に陥っている背景として次に挙げられるのが、採用競争力の弱さです。
それではなぜ、介護業界は採用競争力が弱いのか、以下の表で見ていきましょう。

  • 採用が困難である原因(複数回答)

(%)

回答事業所数 他産業に比べて、
労働条件などが良くない
同業他社との
人材獲得競争が激しい
景気が良いため、
介護業界へ人材が集まらない
その他    分からない   無回答  
全体 4,405
100.0
2,364
53.7
2,338
53.1
842
19.1
842
19.1
265
6.0
42
1.0

参考:公益財団法人介護労働安定センター|令和2年度「介護労働実態調査」結果の概要について

採用競争力が弱い理由としてまず挙げられるのが、「他産業に比べて、労働条件などが良くない」です。
労働条件は仕事を選択するうえで重要な要素となります。
いくら介護業界に魅力を感じやる気があっても、「給与が低い」や「拘束時間が長い」など、労働条件が折り合わなければ、条件の良い他業界へ人材は流れてしまうのです。
次に「同業他社との人材獲得競争が激しい」が挙げられます。
ただでさえ少ない人材を、同業他社と取り合いになるため、現状のままでは介護業界全体の人手不足解消は見込めないでしょう。

離職者が多い

離職者の多さも、介護業界の人手不足を引き起こす要因の1つです。
介護労働安定センターが発表した「令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について」では、2023年度の事業所全体の平均離職率は13.1%となっており、全業界の離職率15.4%よりも低くなっています。
この結果だけを見ると、介護業界の離職率が特別高いとはいえません。
ただし、年齢別の離職率をみると、29歳以下の離職率が20.4%と高く、他の年齢層の1.5~2.0倍程度になっています。
他の年齢層と比べて、ウェイトとしてはそれほど多くはありません。
しかし、29歳以下の離職率の動向は、今後の介護人材の増減に一定程度の影響をあたえるものとなっています。
介護保険制度を持続可能なものとしていくためにも、若年層の離職率を下げる対策が極めて重要です。

介護施設の人手不足の原因

前述した通り「若者の労働力人口の減少」や「採用競争力が弱い」、「離職者が多い」といった背景により、介護業界の人手不足は深刻さを増しています。
ここでは、介護施設の人手不足の具体的な原因を紹介します。

職場の人間関係

介護従事者が直前の介護の仕事を辞めた理由として最も多いのが「職場の人間関係」で、34.3%に上ります。
具体的な理由として最も多いのは「上司の配慮に欠ける言動や厳しい指導、パワーハラスメント」で49.3%です。
それに続くのは「上司の管理能力が低い、業務指示が不明確、リーダーシップがなく信頼できない」で43.2%になります。
そして「同僚の言動(厳しい言い方・悪口・皮肉・嫌がらせなど)でストレスを感じた」が38.8%となっています。
介護施設は忙しく、上司や同僚とじっくり話すのが難しい状況です。
そのため、人間関係でストレスがたまり、結果として離職してしまう人が増える傾向にあります。

労働環境の問題

介護施設の多くは、慢性的な人手不足を背景とした労働環境の問題を抱えています。
例えば、介護職員1人当たりの業務量が増加したり、長時間労働が当たり前になっていたり、どれも介護職員の健康やモチベーションを損なう原因です。
いくら介護にやりがいを感じていても、1人で担当できる業務には限度があります。
限度を超えた業務が続けば心身に不調をきたして、結果として辞めたいと考えてしまいます。

給与や待遇の低さ

介護業界の給与は、一般的に低い傾向にあります。
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員の平均給与額と平均年収額は以下の表の通りになります。

勤務形態 平均月収 平均年収
常勤 317,540円 3,810,480円
非常勤 209,540円 2,514,480円

※なお平均給与額は、「基本給+手当+一時金(1~12月支給金額の1/12)」で算出しています。平均年収は、「平均月収×12」です。

国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」では、1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与が458万円となるため、介護業界の給与の低さが分かります。
特に、新人や若手に対する低い給与と待遇が問題視されています。

従業員の体力的な問題

介護職員は、日常的に利用者を起こしたり入浴させたりしなければならず、体力が必要です。
体力的に負担が大きい介護業界で働く多くの職員は、年齢に関係なく一度は「辞めたい」と考えたことがあるでしょう。
また、介護業界は女性が多いため、体力的な負担は大きな課題となります。
利用者を抱きかかえる動作などで、腰を痛める職員も少なくありません。
このまま慢性的な人手不足が解消されなければ、利用者の移乗介助なども増えて、さらにケガのリスクが高くなってしまいます。

キャリアアップが見通せない

職場の人事評価制度がきちんと整備されておらず、キャリアアップが見通せないことも介護施設が人手不足に陥る要因といえるでしょう。
介護業界は慢性的な人手不足の中で、なんとか人員をやりくりして業務をこなしている状態といえます。
日々の忙しさに忙殺され、きちんと人事評価制度を構築・運用する時間を確保できていません。
そのため、昇進や昇格などキャリアアップにつながる働きをしても適正に評価されず、給与などの待遇アップにも結びつきません。
その結果、職員のモチベーションは低下し、離職につながってしまいます。

【関連記事】介護業界の離職率は?離職の原因や対策方法を紹介

介護施設での人手不足の具体的な対策

ここでは、介護施設での人材不足を解消するための具体的な対策を紹介します。
紹介する対策を全て同時に実施するのは困難です。
しかし、できる対策から一つずつ実施することで、これまで苦労していた人材採用が比較的スムーズに進んだり、人材定着につながったりします。

労働環境の改善

重労働で拘束時間が長い現在の労働環境を改善すれば、離職率の低下につながるでしょう。対策の具体例としては以下の5点が挙げられます。

  • 長時間労働など不適切な労働時間を改善する
  • 業務の間に十分な休憩が取得できる環境を整える
  • 休日を適切に取得できるような環境に変える
  • 職員同士のコミュニケーション活性化を図る
  • 職員のストレス軽減を図る対策を定期的に実施する

上記のような項目を中心に労働環境を見直すことで職員が安心して働け、長期的な雇用を維持できるでしょう。

ITツールの活用

ICTの導入や介護ロボットなどをうまく活用すれば、職員にかかる負担を軽減でき、働きやすさと生産性向上が期待できるでしょう。
例えば、職員が多くの時間を割いている介護記録や日報の作成などは、ITツールの導入で効率化でき、多くのリソースを投入する必要がなくなります。
これにより、現在の人員でも円滑に業務を進められるようになります。
ITツールの活用で、活用前と比べて時間的な余裕がうまれた分、利用者に対して手厚い対応が可能になります。

給与や福利厚生の見直し

平均年収が全業種の平均年収を下回っている介護職員の給与、そして福利厚生の見直しは人手不足対策の重要な要素の一つです。
労働に見合った適正な給与や手当そして定期的な昇給は、職員のモチベーションを高めるだけでなく、サービスの質向上も期待できます。
介護職が好きでやる気もある職員でも、給与が低く休暇も取れないなど、生活が厳しければ長期的に安定して働けません。
責任の重さや業務の難易度に見合った給与や成果に応じた手当の導入、そして十分な休憩や休日の確保が人手不足解消には必要です。

資格取得支援など人材教育支援

初任者研修や実務者研修を修了した職員に対する介護福祉士の資格取得支援も人手不足解消につながります。
資格取得を支援することで、短期で離職してしまうリスクを防止できるだけでなく、職員のスキルアップも期待できます。
なお、資格取得の支援には以下のような方法があります。

  • 資格取得に関わる費用を負担する
  • 資格試験の勉強に必要な時間を確保する

人間関係の良好化・社内コミュニケーションの活性化

介護施設の人間関係を良好化し、社内コミュニケーションを活性化するのも人手不足解消につながります。
人間関係を改善するには以下のような方法が挙げられます。

  • 相手の意見を否定しない
  • 相手と違う考えを伝える際は、相手の意見を認めたうえで強い言葉は使わない
  • 相手を理解する
  • 明るく笑顔で接する
  • 日頃から「ありがとう」を言葉に出して伝える
  • 自分が全て正しいと思い込まない
  • 自分の行動を振り返る

まず、上記のように実践しやすい行動をとるだけでも、人間関係の良好化や社内コミュニケーションの活性化が期待できます。
ただし、それでも問題が解決しない場合は、信頼できる上司や同僚などに相談しましょう。
相談することで気持ちを整理できるだけでなく、解決策が見つかる可能性も出てきます。

外国人介護人材の受け入れ

人材不足解消のため、外国人介護人材を受け入れる企業が増えています。
なお、外国人介護人材は、以下の4つに分類されます。

  • EPA(経済連携協定)
    インドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国の外国人が介護施設で就労・研修しながら介護福祉士を目指します。
  • 在留資格「介護」
    取得者は介護福祉士養成校を卒業し、原則として介護福祉士の資格を保有しています。また、養成校入学時に日本語能力のN2相当を要求されるため、日本語能力も高いです。
  • 育成就労制度(旧技能実習)
    人材確保や人材育成が目的の制度で、3年間で特定技能1号の水準となるように育成します。
  • 特定技能1号
    人手不足改善を目的とした在留資格になります。要件は、介護技能評価・日本語試験N4・介護日本語評価試験の3つに合格することです。合格すれば最長5年間介護施設などで勤務します。

多様な雇用形態の導入

多様な雇用形態を導入することで応募の窓口も広がるため、より多くの人材を採用できます。
女性が多い介護業界は、家庭環境や個別の理由で正社員やパート・アルバイト、派遣社員など、希望する雇用形態がさまざまです。
雇用形態および勤務時間などに関して柔軟に対応すれば、多様な人材を引きつけられるでしょう。
曜日指定勤務や時短勤務などの積極的な採用は、施設と介護職員の双方に大きなメリットとなるのです。

介護業界で「THANKS GIFT」を活用して組織課題を解消している企業事例

介護業界でエンゲージメントツール「THANKS GIFT」を活用して、組織課題を解消している企業を紹介します。

株式会社メディカルアーツ

株式会社メディカルアーツは、鍼灸整体整骨院・児童福祉施設・介護施設を運営しています。
「人がいてこそ成り立つ事業」を運営していることから、人材の定着率とチームワーク向上を目的として「THANKS GIFT」を導入しました。
感謝を伝え合い、互いに承認することを自社の文化として醸成することで、離職率の減少に成功しています。
離職率はTHANKS GIFT導入後から徐々に下がっており、一番高いときと比較して10%ほど下がっています。
THANKS GIFTで感謝を送り合ったり、他の職員の顔が見えたりすることも会社の良い社風を作ることに繋がっています。

One-or-Eight合同会社

One-or-Eight合同会社は、訪問介護や看護、介護実務者研修事業を展開しています。
企業が抱える課題としては、コミュニケーション不足や訪問介護に携わる人材不足が挙げられます。
これらの課題を解決する目的として、従業員間で感謝や称賛を伝えられる「THANKS GIFT」を導入しました。
導入後は、立場関係なく「双方向のコミュニケーション」が取れ、それをコインで表わすことでポジティブなコミュニケーションが行われています。
その結果、従業員の笑顔が増えて採用の面でも改善しており、THANKS GIFTによって採用時の相互理解が深まることで面接希望者が1.4倍に増加しました。

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今回は、介護業界の人手不足の状況やその背景、対策・事例などについて紹介しました。
従業員が定着・活躍できる組織を作るために、自社の従業員の特徴や強みをしっかりと把握し、それぞれがやりがいを持って仕事を行えるよう、人員配置や教育、社内制度を通じた支援を行いましょう。

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