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介護業界の人材確保に向けた取り組みとは?One-or-Eight合同会社・中村代表が語る課題と解決策
介護業界では、人材確保が大きな課題となっています。
高齢化社会が進行する中で、介護職の需要は増える一方ですが、肝心の人材不足が深刻化しています。
そんな中、One-or-Eight合同会社の中村代表は、独自の取り組みを通じて人材確保に成功し、定着率の向上や採用応募数のアップを実現しています。
今回は、中村代表がセミナーで語った「人材確保の課題と解決策」について紹介いたします。
One-or-Eight社の事例を元に、介護業界における人材確保や定着に関する施策実行の参考になりますと幸いです。
もくじ
給与や福利厚生だけを充実させても、採用と定着には繋がらない。環境面も合わせて改善することが重要
介護業界の現状について、中村代表は「人材確保が非常に難しい」と語っています。
One-or-Eight社では、新人職員の方に手取り30万円以上と独自の有給休暇制度の導入、奨学金代理返済制度などと報酬および福利厚生を充実させましたが、求人を出しても応募が少ない、採用しても定着しないという状況が続きました。
そんな状況に直面してきた中村代表は、業界の特性や職員の退職理由に向き合いながら解決策を模索してきました。
実際、職員が退職する理由として多いのは、人間関係や給与、仕事内容、労働環境に不満があるといった「待遇面」だけでなく、職場の人間関係や仕事の進め方に関する「環境面」にも課題があることに気付きました。
単純に給料や待遇を上げるだけでは人材定着には繋がらないという現実を痛感したことから、これまでの取り組みを振り返り、戦略や施策の見直しを行いました。
労働条件を改善する取り組みと同時に、One-or-Eight社で働き続ける自分なりの理由を明確化する取り組みを強化
中村代表は、労働環境を改善して人材を定着させるために、下記の具体的な取り組みを行いました。
1.MVVの明確化と浸透
会社の理念やビジョンを再度職員に浸透させることが重要だと考え、全社員で「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」を明確にしました。
これにより、職員一人ひとりが自分の仕事の意義や目標を再確認し、より高いモチベーションを持って業務に取り組めるようになりました。
2.承認文化の醸成
感謝の気持ちを言葉だけで伝えるのではなく、具体的に職員の貢献を「見える化」することや形に残すことが大切だと気付きました。
具体的には、THANKS GIFTのツールを使って、職員同士が感謝の意を示す文化を作り上げました。
この取り組みによって、職員同士の信頼関係が強まり、働きやすい環境を構築できています。
3.組織への帰属意識の向上
自ら組織を作り上げる意識を持ってもらうためのBuild-up、外部講師を招いてチームマネジメント強化研修の実施、帰属している組織へのイメージをアウトプットするなど、なぜOne-or-Eightという会社で働いているのかを考え、言語化してもらっています。
その他、帰属意識を向上させるために、就業規則や福利厚生の決定、さらには社長の報酬額についても職員が関与できるようにすることで、自分の意見を反映できる環境を作りました。
これにより、職員は自分が会社の一員であると実感できるようになっています。
4.積極的な離職支援
「離職=失敗」と考えがちですが、中村代表は、離職する職員を「社会で活躍するチャンスを持っている人材」と捉え、転職希望者にはサポートを惜しまない姿勢を貫きました。
積極的に次のステージに進むことを後押ししたり、他社とのつながりを活用して応募先の会社に連絡をしたり、職員との信頼関係を築くことができました。
このアプローチによって、職員が新たなキャリアに進むことができ、結果的に離職者が増えても、新たな優秀な人材が入ってくるという良い新陳代謝が生まれました。
組織ブランドを強化することによって、毎月複数名の面談実施に繋がるなど応募者が増加
中村代表がさらに強調していたのは、組織ブランド力の強化です。
特に、採用活動においては、まず自社のブランド価値を向上させる必要があると認識しました。
そのため、会社の理念や価値観をSNS(Twitter、Instagramなど)で積極的に発信することを始めました。
これにより、求職者が自社に対して興味を持ち、5年間で200名以上の応募者数を増やすことができました。
今では、ホームページやSNSを活用した積極的な情報発信が採用活動の一環となり、会社の魅力を求職者に直接伝えることが可能となっています。
組織の全員を定着させるのでは無く、活躍してくれる「人財」に定着してもらうことが重要
介護業界では、転職が非常に多いことが一つの特徴です。
中村代表は、自社で行ったデータ分析を通じて、「入職希望者の92%が過去5年間に転職経験があり、100%が10年以内に転職した経験がある」といった結果を得ました。
このような業界の特性を踏まえ、いかに優秀な「人財」を引き入れ、その人財を定着させるかが重要な課題です。
下位の戦力外のスタッフが職場に居座ってしまうと、組織は衰退してしまうため、下位のスタッフを引き上げることと、上位の人財となる方を定着させることに注力する方向性に変更しました。
中村代表は、職員が安心して働ける環境を提供し、必要な人材を見極めて育成することが不可欠だと語っています。
受動的人材確保から「積極的人財確保」と「積極的離職支援」へ
優秀な人財の定着、組織ブランドを高めてSNSなどを活用することによる採用活動、積極的な離職支援などの取り組みが功を奏し、「職員の自律性の向上」「チーム意識向上」「サービスの質向上」など、様々な良い効果が生まれています。
サービスの質が向上することによって、利用者様のご家族から、感謝の言葉をいただくことが急激に増加しました。
「人の役に立ちたい」という希望や想いを持ってOne-or-Eightで働くスタッフの方に組織として自主性を与え、承認賞賛文化を醸成することによって職員自らが、利用者様やチーム・会社のために考えて行動できています。
既存職員の組織への帰属意識を高めるために組織ブランディングを開始し、人材定着から人財定着の考え方へシフトさせ、HPやSNSを駆使して積極的に会社の情報を公開し、組織にコミットメントする人財に機会を与えることによって、人財が定着するとともに応募数も増加するという良い流れを構築できました。
従業員の離職理由を元に改善を行い、採用のためのブランディング強化や情報発信を行いましょう
中村代表が語った「人材確保の課題と解決策」は、介護業界における深刻な問題に対して、実際にどのように取り組んでいるのかを示してくださる内容でした。
理念の浸透や承認の文化の醸成、帰属意識の向上など、どれも職員の意識を変える重要な施策であり、これらの取り組みが功を奏して、優秀な人財が定着し、職員が離職しても新たに採用できる仕組みが構築されています。
介護業界全体で人材問題を解決するためには、従業員の離職理由を元に改善を続け、採用するために自社のブランディング強化や情報発信が欠かせません。
中村代表の事例を参考に、採用活動や人材定着に取り組んでいただければと思います。