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ISO30414とは?人的資本の情報開示の重要性や世界・日本の動向を紹介
ISO(国際標準化機構)が定める国際規格の1つにISO30414があります。
ISO30414は、数多い国際規格の中の1つで、人的資本に関するガイドラインです。
品質に関するISO9001ほど認知度は高くありませんが、企業にとって重要な規格の1つであることは間違いありません。
今回は、国際規格やISO30414の概要や重要性、人的資本の情報開示に関する国内外の動向などについて紹介します。
もくじ
国際標準規格(ISO)とは?
ISOは、サービスや製品の国際的な取引を円滑化するために設けられた非政府機関です。
ISOが発足したのは1947年で、国家間のサービスや製品の標準化活動の促進と、知的・科学的・技術的・経済的な活動による国際協力の発展を主な目的としています。
ISOの主な役割は、サービスや製品の品質を国家間で同レベルに保つための国際規格の制定です。
国際規格は、ISO規格やマネジメントシステム規格とも呼ばれていて、最も有名な環境に関するISO14001の他にも、多くの規格が制定されています。
サービスや製品を提供する企業にとって最も基本的な規格は、ISO9001です。
ISO9001は、サービスや製品の継続的な品質向上を目的とした規格で、あらゆる業界で使用できるガイドラインとしてまとめられています。
その他にも、食品の安全に関するISO22000や情報セキュリティに関するISO27001など、全部で2万種類を超える規格がISOによって制定されています。
ISO30414は、人的資本に関するガイドライン
ISO30414は、国際規格の1つで、2018年に「社内外への人的資本レポーティングのガイドライン」として制定されています。
ISO30414は、その名称にもあるように、社員・顧客・株主などの人的資本に重点を置いたガイドラインです。
ISO30414では、これら人的資本について、「組織にとって最重要な経営資源でありリスクの1つである」としています。
そのうえで、ISO30414が企業に求めているのは、人的資本のデータ収集・測定・分析を行ったうえで、ステークホルダーに対して人的資本の現状と目標を客観的な指標で示すことです。
提示が求められているのは、次の11の領域です。
- リーダーシップ
- 後継者育成計画
- 企業文化
- 健康経営
- 法令遵守と倫理
- 生産性
- コスト
- 労働力
- 採用・異動・離職
- スキルと能力
- ダイバーシティ
なお、これら領域のデータ収集・測定・分析に関しては、58の測定基準が設けられています。
そのため、ISO30414は、このような業務に不慣れな担当者でも、比較的取り組みやすい国際規格の1つです。
また、結果を認証機関に提出して審査にパスすれば、ISO認証を受けられます。
認証されたことは、社会一般にも公開されるため、企業の社会的信頼度の向上に役立てられます。
ISO30414等の人的資本情報を開示する重要性とその理由
ISO30414による人的資本情報の開示が重要視されるのは、「投資家の意識の変化」や「企業価値の持続的な向上の実現」につながることが主な理由です。
ISO30414が制定されるきっかけは、2008年に発生したアメリカの投資銀行破綻に端を発したリーマンショックです。
財務データだけを参考にした投資行動が世界的な金融危機の主要因とされたことで、アメリカを中心に人的資本情報の重要性が叫ばれるようになります。
その後、企業価値を財務データだけで判断することに限界を感じた機関投資家たちは、ワーキンググループを組織させて人的資本情報の規格作成を試みます。
この試みは失敗に終わりましたが、その後のISO30414の制定につながります。
機関投資家たちの中には、リーマンショックの苦い経験が脈々と受け継がれているため、企業が大口の投資を呼び込むためには、人的資本に関する客観的な情報開示が必要になります。
また、世界的なESG投資(Environment Social Governance)への関心の高まりも、ISO30414が重要視される理由の1つです。
ESG投資では、「二酸化炭素の削減」「ダイバーシティの推進」「積極的な情報開示」を行う企業への投資を推進しています。
機関投資家の中にも、ESG投資に積極的な投資家が少なくありません。
そのため、企業価値の持続的な向上のためには、ESG投資を呼び込むことが重要な要素の1つとされています。
2020年に公表された経済産業省による「人材版伊藤レポート」でも、「投資家による世界的なESG投資への関心の高まりと、人的資本情報の開示の流れには共通した部分が多くある」としています。
そのうえで、企業価値の持続的な向上を実現するために必要とされているのが、投資家や顧客などとの「人材戦略についての積極的な対話」や「人的資本情報の見える化」です。
本レポートの中では、ESG投資のような変化に柔軟に対応することが、結果的に企業価値の持続的な向上につながるとしています。
このように、企業価値の持続的な向上の観点からも、人的資本情報を積極的に開示する重要性が理解できます。
↓ISO30414をはじめとした人的資本の情報開示が求められる背景を紹介した記事はこちら↓
人的資本の情報開示が求められる背景と日本企業の動向を紹介
ISO30414に対する世界と日本の動向
ISO30414を最も積極的に推進しているのは、アメリカです。
アメリカでは、機関投資家がどの国よりも早く人的資本情報の重要性に気づき、取り組みを始めた歴史があります。
そんな米国で本格的に人的資本情報への関心が高まるのは、2018年のISO30414の制定後です。
2020年には、SEC(アメリカ証券取引委員会)が人的資本情報の開示を上場企業に義務付けたことで、その重要性の高さが再認識されます。
また、同じ2020年には、「内部や外部を問わない労働力への投資の現状を開示せよ」という法案が連邦議会に提出されています。
この法案では、「ISO30414に準拠していれば当法案にも準拠する」とされていて、アメリカにおけるISO30414の重要性の高さが理解できます。
なお、ヨーロッパでISO30414を積極的に推進しているのは、ドイツです。
ドイツでは、ドイツ銀行などがISO30414の制定に携わってきたことから、他のヨーロッパ諸国よりも、ISO30414に対する認識や関心が高いとされています。
そういった背景から、投資家に対して人的資本情報だけのレポートを提示する企業も増えています。
日本では、諸外国と比較して、ISO30414の認知度は決して高くありません。
ただ、「人材版伊藤レポート」が公表されたことで関心は高まっていて、2021年に閣議決定された成長戦略にも、中小企業を含めた企業への「人的資本情報の見える化推進」が明記されています。
企業の中には、すでに取り組み始めている企業や、積極的な推進を表明している企業もあります。
国内外の機関投資家による関心の高さや職務内容を規定したうえで雇用するジョブ型雇用促進の観点などから、今後も取り組みを開始する企業は増加していくものと考えられています。
従業員が定着・活躍できる組織を作ろう
今回は、国際規格やISO30414の概要や重要性、人的資本の情報開示に関する国内外の動向などについて紹介しました。
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