13112 view

物流・運送業界の2024年問題とは?具体的な課題や対策を紹介

物流・運送業界の2024年問題とは?具体的な課題や対策を紹介

近年、トラックドライバーの長時間労働が問題となっており、法律によって時間外労働の時間が制限されました。
しかし、時間外労働の制限により「2024年問題」が発生しています。
今回は、物流・運送業界の2024年問題の内容や具体的な課題・対策について紹介します。

物流・運送業界の2024年問題とは?

物流・運送業界の2024年問題とは、働き方改革に関連した法律により、トラックドライバーの労働時間に上限規制が適用されることで生じる問題の総称です。
2024年4月1日より、時間外労働を年間960時間までに制限するため、トラックドライバーの労働時間が短縮されます。
労働時間の短縮は、トラックドライバーの不足が問題になっている昨今で、運送能力が不足する恐れがあります。
結果、一日に運べる荷物の量が減ったり、トラック事業者やトラックドライバーの収益が減少する可能性があります。
また、顧客が通販サイトで商品を購入しても、なかなか届かないという状況になりかねません。
よって、物流・運送業界の2024年問題を早急に解決することが、今求められています。

働き方改革関連法で改正された内容

働き方改革関連法で改正された主な内容は以下の通りです。

  • 時間外労働の上限規制

労働基準法の時間外労働の上限規制(第36条)では、自動車運転業務の場合、年960時間までに制限されました。
法律に違反すると、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金を科せられます。
なお、「時間外労働が月45時間を超えられるのは1年で6か月まで」「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」とする規制は、適用されません。

  • 時間外労働の割増賃金率引き上げ

2023年4月1日より、時間外労働が月60時間を超える場合に中小企業における時間外割増賃金率が、25%から50%に引き上げられました。
この労働基準法は、トラックドライバーにも適用され、違反すると時間外労働の上限規制と同様の罰則を科せられます。
また、22時から翌日の5時までの深夜時間帯に時間外労働を行うと、深夜割増賃金を25%加算しなければなりません。
つまり、月60時間を超えており、かつ深夜時間帯の労働であれば、75%の割増賃金率を加算します。
なお、働き方改革関連法には以下の特例があります。

  • 2人乗務(ドライバーが同時に2人以上乗務する場合)

身体を伸ばして十分に休息できる設備がある場合、拘束時間を20時間、休息時間を4時間まで短縮可能

  • 分割休息(9時間継続して休息時間を与えられない場合)

1回3時間以上であれば、分割休息が可能。休息時間の合計は、2分割であれば10時間以上、3分割であれば12時間以上を与えなければならない。
また、1か月あたりの分割休息は2分の1を限度とし、3分割が連続しないよう努める必要がある

  • 隔日勤務(やむを得ない場合)

2日間の拘束時間を21時間、休息時間を20時間とする

  • フェリー

フェリーの乗船時間は、原則休憩時間とする

2024年問題に対応するためのドライバーの拘束時間の目安

時間外労働の上限規制に伴い、拘束時間や連続運転時間、休息時間の基準なども改正されました。
トラックドライバーにおける、働き方改革関連法で改正された拘束時間や休息時間の基準は次の通りです。

1年の拘束時間 1か月の拘束時間 1日の休息時間
法改正前 3,516時間 原則:293時間
最大:320時間
継続8時間
法改正後 原則:3,300時間
最大:3,400時間
原則:284時間
最大:310時間
継続11時間を基本とし、継続9時間

また、運転時間を2日間で平均1日9時間以内、2週間で平均1週44時間以内とします。
連続運転時間を4時間以内とし、運転を中断する際は休憩が必要です。

物流・運送業界の2024年問題の具体的な問題

ここでは、物流・運送業界の2024年問題の具体的な問題を見てみましょう。

輸送能力の減少

時間外労働が規制されることにより、輸送能力が減少します。トラックドライバーの勤務時間が制限されてしまうと、勤務時間内に運送できる量の荷物しかトラックに積載できません。
また、十分な休憩時間を設けなければならないため、人員の確保も難しくなり、荷物を引き受けられなくなるでしょう。
そして、運送能力が減少すると、近年通販サイトで主流の「当日配達」「翌日配達」などが受けられなくなります。
加えて、スーパーマーケットに売られている新鮮な青果物や水産物などが販売されなくなるケースもあるかもしれません。
経済産業省の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」によると、このまま何も対策を行わなければ、運送能力が2024年に14.2%、2030年には34.1%不足する恐れがあるようです。
重さに換算すると、2024年は4.0億トン、2030年には9.4億トン相当が不足すると見込まれています。

物流・運送業界の企業の売上・利益減少

トラックドライバーの労働時間減少を、新しく人材を雇うことで補う場合は、人材採用・新人教育などのコストが必要です。
人材を多く雇うほど、社会保険料といった労務に関連するコストも増加するため、人件費の増加は避けられません。
また、2023年4月より、1か月当たり60時間超の時間外労働に対し、割増賃金を50%以上支払わなければならなくなりました。
そのため、ドライバーへ支払う残業代も増加するでしょう。
人件費が多くかかってしまうと、たとえ売上が伸びたとしても総合的に見ると利益が減少するケースがあるのです。

ドライバーの収入減少による人手不足

輸送能力の減少や人件費の増加により企業の収益が悪化した場合、トラックドライバーの収入が減少する恐れがあります。
また、2024年問題を解決するために時間外労働を減らすと、ドライバーの残業代も減ってしまい、生活レベルの維持が困難になる場合があるでしょう。
すると、従業員は収入が減少したことによって転職を希望したり、新しく人材募集をしても給与が少なく応募されなかったりすることも想定されます。
2024年問題は、一つひとつの課題が相互に影響をもたらすため、悪循環になりかねないのです。

荷主側の運賃負担の上昇、納期の長期化

トラックドライバーが不足すると、給与を上げて人材確保に取り組む必要があります。
人件費を増加せざるを得ないため、人件費にかかるコストを運送料金に加算しなければなりません。
荷主側の運賃負担が上昇してしまうと、他の運送会社に依頼したり荷物を送ることを断念したりするため、売上の減少につながります。
また、通販サイトでは送料無料サービスを行っている企業が多くありますが、送料が高ければ「送料がかかるから」と購入を諦めるユーザーは少なくないでしょう。
さらに、時間外労働や休日出勤、休息時間の規定でドライバーが不足した場合、輸送納期が長期化する恐れがあります。

2024年問題で物流・運送業の企業が対策すべき施策・取り組み

2024年問題を解決するには、ツールによる業務効率の向上や、一般消費者へ問題の認知を広めることが大切です。
ここでは、2024年問題で物流・運送業の企業が対策すべき施策・取り組みを紹介します。

輸送・運送計画の見直し

2024年問題の解決には、業務の効率化が欠かせません。
限られた勤務時間で効率よく荷物を運送するためには、輸送・運送計画を見直すことが重要です。
例えば、複数人がリレー式で運送を行ったり集荷と配達を分担制に変更したりなど、体制を再編成して空車率の低減や積荷待機時間の削減を可能な限り目指す必要があります。
また、トラックだけでなく船舶や鉄道による輸送方法もあるため、運送効率が良くなる輸送計画を立てるとよいでしょう。

勤怠管理・労務管理ツールの導入

勤怠管理や労務管理ツールの導入によって、業務の効率化や人件費削減が可能です。
勤怠管理ツールには、勤怠管理に加えて労働時間の管理や給与計算、出庫・帰庫情報の共有などの機能が搭載されています。
なかには、運送業に特化した勤怠管理ツールもあり、現在さまざまな運送会社で導入されています。
そのため、勤怠管理ツールは物流・運送業界の手助けになるでしょう。

実際にA社では、出勤簿や日報をExcelに手入力して給与計算を行っていましたが、ツールの導入後は紙ベースのデータをデジタル上で扱えるようになり、事務の工数が減りました。
少人数のスタッフで運営しているため、業務の効率化がかなって助かっているそうです。

各種ITツールやDXツールの導入

業務の効率化を目指すためには、ITツールやDXツールを導入することが重要です。
物流・運送業界で導入すべきITツールを以下に挙げました。

  • デジタルタコグラフ
  • 配車支援・計画システム
  • 車両動態管理システム
  • 勤怠管理システム
  • 運行管理システム
  • ETC2.0
  • IT点呼
  • 求荷求車システム
  • 原価計算ツールなど

また、物流・運送業界でDX化を実現するツールの例は、以下の通りです。

  • 配車管理のデジタル化
  • 手続きの電子化
  • AIを活用したオペレーションの導入
  • トラック予約システムの導入
  • 倉庫内作業の自動化

それでは、実際にどのようにツールを導入したらよいのでしょうか。
運送業界でDXツールを使用した事例を以下に紹介します。

B社では、人手不足が課題で、ドライバーや社員全員の勤務状態を把握できておらず、安全対策や働き方改革の強化が必要でした。
そこで、AIを搭載した点呼ロボットを導入します。
AI点呼ロボットは、本人確認や免許証チェック、アルコールチェック、体温・血圧管理などの点呼業務を行います。
IT技術を導入することで、運行管理者の点呼業務の自動化し負担が軽減されたうえに、運行管理レベルの維持も図れました。

荷主と一般消費者への協力依頼・理解促進のための広報活動

荷主と一般消費者へ2024年問題の解決協力をお願いするために、広報活動を行いましょう。
物流事業者側だけでは全てを解決できないため、消費者側にも理解を得ることが重要です。
協力依頼する内容は、以下の2点です。

①再配達の削減

再配達は、トラックドライバーにとって時間や手間がかかるため、できる限り削減できるよう協力を依頼します。
荷主や一般消費者は、確実に受け取れる場所や日時を設定したり、宅配ボックスの設置や置き配の設定をしたりして、再配達を減らす配慮を心がけましょう。

②まとめ買い

まとめて注文をすることで運送回数を減らせるため、まとめ買いも推進しています。
広報活動の具体的な方法には、テレビやWeb広告のメディアで告知したり、自社SNS・Webページで情報発信をしたりすることが挙げられます。
一人でも多くの人の目に留まるよう、さまざまな方法で広報活動を行いましょう。

従業員の離職防止、採用強化

従業員の離職防止や採用強化に努めることも、2024年問題の解決に重要なポイントです。
業務効率化を図りつつ、人材を維持・増員できれば、問題は徐々に解決へ向かうでしょう。
以下では、従業員の離職を防止するポイントを紹介します。

・円滑なコミュニケーションを心がける

従業員同士のコミュニケーションがうまくいかなければ、離職率が上がる傾向にあるようです。
細かなことでもいつでも相談できるよう、日頃から対話やコミュニケーションを取り、従業員同士で信頼関係を築きましょう。

・アンケートを実施する

従業員が企業をどのように思っているか、アンケートを取ります。
企業の方針や業務のやり方に不満を持っており、離職を考えている従業員がいても、解決できれば離職防止につながる可能性があるためです。
企業の管理職が気付かない場合もあるため、従業員が働きやすい環境を整えるために、アンケートで聞き取りをしてみましょう。

また、採用を強化するコツも紹介します。

・具体的に働くイメージができるような求人広告を出す

求人広告では、求職者が知りたい情報をわかりやすく記載しましょう。
例えば、雇用形態や労働条件だけでなく、一日のスケジュールや仕事内容、平均残業時間などの内容が挙げられます。
実際に働くイメージができると、求職者の応募につながりやすくなります。

・働きやすい職場環境をつくる

企業は、求職者が応募したいと思う職場をつくることが大切です。
例えば、金銭的な福利厚生であれば家賃補助や食事代の補助、ワークライフバランスを重視するなら出産・育児休暇やレジャー割引といった福利厚生などが挙げられます。
給与面だけでなく、福利厚生の充実も人材募集に効果的です。

おすすめの離職対策ツール「THANKS GIFT」

THANKS GIFT_サービスサイトトップ

THANKS GIFT(サンクスギフト)は、感謝を贈り合うことで社内コミュニケーションを活性化させ、社内文化を醸成でき組織や社内の生産性向上、エンゲージメント向上に寄与するツールです。
大手IT製品レビューサイトでは、プロダクトの機能の豊富さや使いやすさ、サポートの充実度などで評価いただき、複数のカテゴリにおいて満足度No.1を獲得しています。

THANKS GIFTの資料ダウンロードページはこちらをクリックください

THANKS GIFT_機能一覧

THANKS GIFT(サンクスギフト)は、感謝や称賛を伝え合うサンクスカードをはじめ、経営者の思いや従業員のコミュニケーションを活性化させるWeb社内報、組織の課題を把握するための組織サーベイなど、組織づくりを行う上で必要な機能を搭載したプロダクトです。
管理者がポイントの管理・付与ができる機能、従業員自身で保有ポイントを確認する機能など、ピアボーナス制度を運用する上で必要な機能が搭載されています。

2024年問題の課題を把握し、対策を実行しよう

今回は、物流・運送業界の2024年問題の内容や具体的な課題・対策について紹介しました。
会社の状況や外部環境に合わせて、上手くツールを活用し、組織を改善していきましょう。

「THANKS GIFT」は、エンゲージメントを向上させる上で重要な理念浸透や社内コミュニケーションを活性化させる、Web社内報やサンクスカードなどの機能を搭載した社内コミュニケーションツールです。
「THANKS GIFT」を活用して従業員エンゲージメントや働きがいを向上させる取り組みを開始しませんか?