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【事例10選】アルムナイ採用の企業事例や効果、実施の流れを紹介
自社を退職してしまったが、優秀な社員にはまた戻ってきて欲しいという採用手法がアルムナイ採用です。
一度働いた従業員は、業務内容や社風をある程度把握した上で入社するので、ミスマッチが起こりづらく、かつ期待するパフォーマンスを上げやすい傾向にあります。
今回は、アルムナイ用の企業事例や実施公開、導入の流れなどについて紹介します。
もくじ
アルムナイ採用とは?
アルムナイ採用とは、自社を退職した人を再雇用する採用手法です。
アルムナイ(alumni)は英語で「卒業生」「同窓生」などの意味を持ち、人事分野では定年退職者以外の退職者や元社員にあたる関係性の人材を指します。
欧米ではアルムナイを貴重な人材と考え、退職後もコンタクトを取って組織化し、その中から再雇用するアルムナイ制度が一般的に行われています。
以前の日本では終身雇用制度が普及しており、特別な理由がない限り退職することはほぼありませんでした。
しかし、近年は終身雇用制度の崩壊に伴い、転職が一般的になっていることから、日本でもアルムナイ採用が注目されています。
アルムナイ採用を実施するメリット
ここでは、アルムナイ採用を実施するメリットを解説します。
アルムナイ採用を実施するメリットとして、採用のミスマッチの防止や即戦力の確保などが挙げられます。
採用のミスマッチを防げる
アルムナイ採用は採用のミスマッチが起こりづらい傾向があります。
採用のミスマッチとは、企業に合わない求職者を採用することです。
新規採用や中途採用の場合、企業側が開示する情報が不十分であったり求職者のスキルや性格を把握しきれなかったりする場合があります。
相互理解が深まらないまま採用すると、入社後に「入社前にイメージしていた内容と違う」「想定通りに活躍してくれない」などのトラブルが発生する恐れがあります。
一方、アルムナイは勤務経験を通じて業務内容や社風などをすでに知っているため、入社前と入社後の企業のイメージにギャップが生じません。
また、企業側もアルムナイの過去の業績やパフォーマンスを知っているため、人材にスキルや適性があるかどうか判断しやすいでしょう。
採用のミスマッチを防げれば、早期離職の防止や生産性の低下にもつながります。
採用教育費を抑えられる
アルムナイ採用は新規採用や中途採用に比べて採用教育費がかからない傾向です。
新規採用や中途採用の場合、求人広告の掲載費用や採用担当者の人件費や新入社員研修の費用など、採用や教育に多くの費用がかかります。
一方、アルムナイ採用では退職者本人からの応募や在職中の社員からの推薦により採用に至るため、求人媒体を活用する必要はありません。
また、アルムナイは自社での働き方をすでに知っているため、ゼロから教育しなくても業務をこなせるでしょう。
企業説明会や新入社員研修の実施も不要になるため、採用教育費の削減につながります。
即戦力を確保できる
アルムナイ採用は即戦力の採用を進めるうえでも重要です。
一般的に新たな人材を採用する場合、業務をこなせるようになるまでには約1〜3か月かかります。
新入社員を受け入れる部署には教育担当者も求められるため、業務負担も増えるでしょう。
一方、アルムナイは自社の勤務経験を持っており、社風や業務内容だけでなく社内システムや人間関係もすでに把握しているため、即戦力として期待できます。
教育担当者の選出も不要になるため、本来の業務に人員を割けられることによる生産性向上や、競争力強化につながる可能性もあります。
企業ブランディングにつながる
アルムナイが再び企業に戻るということを社外にアピールすることで、企業ブランドやイメージを向上させられる可能性があります。
アルムナイ採用はアルムナイが自社に戻ってもう一度働きたいと思わなければ実現しません。
これは、裏を返せばアルムナイ採用が進んでいる企業は魅力的な職場であるということです。
そのため、アルムナイ採用を導入していることを発信すれば、求職者に良好な職場環境や健全な企業文化を持っているという印象を与えられる可能性があります。
社員のキャリアや人生を尊重しているというイメージを与えられれば、既存社員のモチベーションや満足度の向上にもつながるでしょう。
特に、競争が激しい業界で優秀な人材を確保するためには、企業ブランディングが不可欠です。
新たな知見やスキルを得られる
アルムナイ採用を進めると、社内に新たな知見やスキルを得られる可能性があります。
アルムナイは退職後に他の企業や業界で新たな経験や知識を積んでいることがほとんどです。
アルムナイが身に付けた知識やスキルを自社で発揮してもらうことで、社内のイノベーションや組織全体の成長につながります。
アルムナイを通じて業界の最新動向や競合他社の情報を把握すれば、自社の経営判断にも役立つでしょう。
また、アルムナイに対してヒアリングをすることで、自社の問題点や魅力を把握することも可能です。
アルムナイの退職理由を把握することで、在職中の社員が退職してしまう前に社内の評価制度や職場環境などを見直せます。
反対に、もう一度働きたいと思える自社の魅力や良い点を把握すれば、求職者に魅力的な情報を効果的に発信できるでしょう。
アルムナイ採用を実施する際の流れ
ここでは、アルムナイ採用を実施する際の流れを紹介します。
再雇用制度の整備
最初に面接回数や採用基準などのルールを定めて、再雇用制度の策定が必要です。
「辞めても簡単に復帰できる」と既存社員に認識されると、社員のモチベーション低下や離職者の増加を招きます。
そのため、再雇用制度を整備する際は条件を明確にして既存社員に周知することが大切です。
条件の例は、「勤続年数5年以上」「リーダー職を経験した方」「専門的な資格や能力を持っている方」「自社の評価基準で一定以上に達している方」などが挙げられます。
また、アルムナイを採用した場合の待遇や評価は、既存社員が不満を抱かないよう両者にとって公平でなければなりません。
縁故採用と捉えられないためにも公正な基準にのっとり、アルムナイ採用を進めることが大切です。
社内の受け入れ態勢の構築
アルムナイ採用を導入する際は制度を作るだけでなく、社内の理解を得て、受け入れ態勢を整えることも重要です。
人材は多様な価値観やキャリアを持つ人材を受け入れる姿勢や環境があることで、その真価を発揮できます。
しかし、社員の中にはアルムナイ採用の存在に疑問を持ったり拒否感を示したりする方もいるでしょう。
そのため、既存社員には制度の目的や重要性を説明する必要があります。
また、退職する際の企業の対応はアルムナイ採用において特に重要です。
円満に退職できなかった場合、アルムナイ採用を導入していたとしても退職者が再び自社で働くことはないでしょう。
退職時にアルムナイ採用の存在を知らせない、または情報を受け取る手段を用意しない場合は、そもそもアルムナイ採用につながりません。
そのため、人事担当者や管理職にはアルムナイ採用の存在を知らせたうえで、退職者を快く送り出す必要があります。
コミュニケーション戦略の策定
コミュニケーション戦略はアルムナイとの関係を保つうえで不可欠であり、アルムナイ採用の成功を左右する重要な要素です。
アルムナイとのコミュニケーション方法として、定期的なニュースレターの配信やFacebook・LinkedInなどのSNSプラットフォームの活用が挙げられます。
アルムナイとの関係性を強固にしたい場合は、アルムナイ向けの専用サービスを利用しましょう。
これらのコミュニケーション方法を活用することで、アルムナイに自社の動向や方針変更などの情報を提供し続けられるとともに、長期的な関係を築けます。
なお、コミュニケーション戦略を策定する際はアルムナイ採用だけを狙い過ぎないようにしましょう。
アルムナイ採用に偏ったコミュニケーションを取ると「関わると入社を促される」と警戒される恐れがあります。
アルムナイ採用の実施
アルムナイ採用では、事前に労働条件や働き方について細かくすり合わせることが重要です。
在職時とは待遇や環境が異なる場合もあるため、本人の要望を聞きつつ自社が提示できる条件を説明する必要があります。
また、入社後は自社の企業文化や業務の変更点などを説明することも大切です。
アルムナイが再び自社で活躍できるようにフォローすることで、即戦力として活躍が期待できます。
アルムナイ採用を導入した企業事例
ここでは、アルムナイ採用を導入した企業の事例を紹介します。
実際の企業事例を参考にして、アルムナイ採用を成功に導きましょう。
三菱重工
日本を代表する重工メーカーの三菱重工はウェルカムバック採用という制度を設けています。
退職後に得た経験やスキルを生かして再び働きたいと考えるアルムナイを再採用する制度で、退職理由にかかわらず社員として1年以上勤務した自己都合退職者が対象です。
また、再採用窓口であるウェルカムバック採用サイトも設けており、退職者への情報発信とコミュニケーションも行っています。
導入して間もなく想定を超える退職者に登録されており、ウェルカムバック採用サイトの登録者数は数百名に上りました。
すでに内定者も数名出ており、再活躍する人材の創出に成功しています。
みずほFG
みずほFG(フィナンシャルグループ)は、カムバックアルムナイ採用という制度を設けており、2020年にはみずほアルムナイネットワークも設立しています。
みずほアルムナイネットワークではアルムナイ専用のSNSを立ち上げており、掲載している産業調査レポートや活躍しているアルムナイのインタビュー記事は特に好評です。
また、アルムナイと現役社員が交流するイベントも開催しており、新たな関係性を構築する機会も提供しています。
当初114名だった登録者数は2024年7月には1529名に増加しており、2023年度のアルムナイ採用の実績も2022年度の倍に増加しました。
アルムナイからは「退職後も愛着を感じている」「ネットワークをビジネスに生かしたい」などの反響を得ており、退職後の関係構築にも成功しています。
三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行は、ウェルカムバック採用という制度を設けており、併せてアルムナイネットワークも構築しています。
アルムナイネットワークでは事業や制度などをアルムナイに説明しており、再入社しやすい雰囲気を作っています。
また、アルムナイと現役社員やアルムナイ同士でも交流できるイベントを開催している点も特徴です。
現在、アルムナイネットワークの登録者数は銀行と信託を合わせて約1000名に上っており、採用だけでなくビジネスや学びにつながる機会としても活用されています。
トヨタ自動車
自動車メーカーのトヨタ自動車は、2022年2月にアルムナイネットワークを立ち上げており、登録者数は2024年6月時点で480名に上っています。
また、2023年7月にはアルムナイ採用を本格化させ、特設ページも開設しました。
同社のアルムナイ採用は、キャリアアップややむを得ない事情により自己都合退職したアルムナイを対象にした制度です。
開始から間もないため採用実績は少ないものの多くの応募が集まっており、実際に一部のアルムナイは再入社につながっています。
パナソニックグループ
パナソニックグループは、社員再就職制度やカムバックキャリアの受け入れを行っており、アルムナイ採用に力を入れています。
同グループは2024年4月にアルムナイコミュニティを立ち上げました。
パナソニックグループのアルムナイコミュニティは、再雇用を促す目的ではなく、アルムナイと気軽につながり続ける場として提供している点が特徴です。
アルムナイとメッセージをやり取りしたり、ワンクリックでアルムナイに近況を質問したりできます。
また、コミュニティには現役社員も参加でき、アルムナイだけでなく現役社員にとっても人脈が広がるきっかけとなっています。
日本製鉄
鉄鋼メーカーの日本製鉄は、アルムナイとのつながりを構築するために、2023年10月31日に日本製鉄アルムナイネットワークを開始しました。
日本製鉄アルムナイネットワークでは、アルムナイと現役社員、またはアルムナイ同士とコミュニケーションできるほか、同社の情報も受け取れます。
2024年1月30日にはアルムナイ同窓会も開催しており、アルムナイとの関係構築に力を入れています。
NTT
通信事業最大手のNTTグループは、数百人単位で経験者採用を進めており、その一環としてアルムナイ採用を推進しています。
NTTグループの卒業生を対象としたアルムナイコミュニティも設立しており、2024年9月に開催されたアルムナイイベントでは約250名もの参加者が集まりました。
同グループは、今後もアルムナイと現役社員の交流イベントを開催するほか、NTTのサービスを評価してもらうことも計画しています。
マクロミル
マーケティング・リサーチ企業のマクロミルは、以前から社員の再入社を推進していましたが、2024年5月に正式にアルムナイ採用を開始しました。
アルムナイ採用の開始とともに、退職者が参加できるコミュニティ「ミル卒」も立ち上げています。
ミル卒では、マイページを通して中途採用の求人や各種情報の確認が可能です。
また、最新の企業動向の把握や情報交換もでき、退職者との関係の維持や再入社しやすい環境の醸成につなげています。
MIXI
IT企業のMIXIは、社員に採用候補者を紹介してもらうリファラル採用を進めていましたが、その中でも退職者が社員の紹介を受けて再入社するケースが増えていました。
実際に2022年〜2024年6月の間に12名が退職後に再入社しており、アルムナイ採用によって再入社した社員がさまざまな部門で活躍していました。
これを受け、MIXIはアルムナイ採用を推進するために2024年9月にアルムナイ専用サイトを立ち上げます。
アルムナイ専用サイトでは、同社のニュースやイベント情報を閲覧できるほか、カムバックコーディネータとの相談や自身の経験に合う求人の閲覧も可能です。
退職者とのつながりを維持し、再入社しやすい環境を整備することで、アルムナイ採用をさらに強化しています。
東京都
東京都は「都庁版アルムナイ採用選考」という名目で、2024年4月から中途退職者の再採用を始めました。
都は、優秀な人材を厳選して再採用したいと考えており、事務職や技術職や資格免許職などさまざまな職種で募集を行っています。
また、課長職以上は1965年4月2日以降に生まれた方、その他の役職は1963年4月2日以降に生まれた方が対象となっており、年齢制限も緩和されています。
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今回は、アルムナイ用の企業事例や実施公開、導入の流れなどを紹介しました。
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