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パワハラ防止法とは?制度内容や開始時期、企業側で行うべき対策について紹介

パワハラ防止法とは?制度内容や開始時期、企業側で行うべき対策について紹介

さまざまな人が集まって働いている企業では、個性の差が生産性アップにつながる場面も少なくありません。
しかし、「パワハラ」という言葉があるように、一部の社員による度を越した指導が行われている場合もあります。
そこで、今回は2019年5月に成立した「パワハラ防止法」について制度の内容や開始時期、どのような対策をするべきなのかについて紹介します。

パワハラ防止法の制度内容

2019年5月の法の改正に伴い、成立したのが「パワハラ防止法」です。
正式には「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」といいます。
この法律によって、パワハラを防止するために企業はパワハラに関する相談窓口を設置したり、再発防止対策をしたりすることが義務づけられました。

パワハラ防止法が制定された背景

2016年に厚生労働省が実施した調査で、企業に設置されている相談窓口において最も相談が多かったのが、パワハラに関するものだったという結果が出ています。
その時点で「過去にパワハラを受けたことがある」と答えた人が32.5%でした。
厚生労働省は2012年にも同様の調査を行いましたが、その際には25.3%だったため、パワハラの被害者が増加傾向にあるとわかります。
そういった背景があり、パワハラ防止法が施行されました。

パワハラ防止法に違反した場合の罰則に関しては、2021年4月現在時点では定められていません。
しかし、厚生労働大臣の判断により、必要に応じて違反をした企業に指導や勧告がされる場合があります。
もし、行政から勧告をされても対策をしなかった場合に待っているのは、違反をした企業名の公表です。

大企業は2020年6月からすでに施行されており、中小企業に関しては準備も必要になることを考慮し、2022年4月からと決められました。

パワハラの定義

パワハラ防止法によって、企業にはパワハラを防止するための対策をすることが義務化されました。

パワハラになる言動は

  • 優越な関係を背景とした言動
  • 業務上必要かつ相当な範囲を越えたもの
  • 労働者の就業環境が害されるもの

という3つの要件すべてを満たすものです。

たとえば、上司が部下のミスを叱責する場面でミスには関係がない人格を否定するような発言、経験や知識の差があるにも関わらず、優越の差を感じさせるような言動があったとします。
そういった言動によって部下が働く意欲をなくしたり、仕事に集中できなくなるほど影響を受けたりした場合がパワハラです。

法律上では典型的なパワハラ例として、

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過少な要求
  6. 個の侵害

の6つを挙げています。

先ほどの例では、人格を否定するような発言や優越を感じさせる発言が「精神的な攻撃」です。
「個の侵害」とはプライベートに過度に立ち入る言動をすることを指します。

民法ではパワハラが不正行為責任として罰せられたり、場合によっては刑事罰を受けたりする可能性もあるので、過度な言動をしないように気を付けなければなりません。

パワハラ防止法の策定に伴い、企業が行わなければならない対策

パワハラ防止法の施行で企業がしなければならない義務は

  • 社内方針などで明確化し、周知・啓発をする
  • 相談窓口の設置
  • パワハラが実際に発生した場合の迅速で適切な対応

です。

自社の社内方針にパワハラを行ってはならないことをはっきりと記載し、従業員すべてに周知・啓発をする必要があります。
たとえば、ホームページや社内報に記載し、パワハラに関する具体例を挙げたり、研修や説明会を行ったりという方法が考えられます。
会社としてパワハラに関する内容を明記することで、従業員も認識できるようになります。

パワハラの相談窓口を設置し、研修を受けた担当者を配置することも必要で、相談を受けた際の対応マニュアルを作成しておくことも重要です。
研修とマニュアルによって適切な対応を行い、被害を受けた従業員が相談しやすい環境を作る必要もあります。
さらに、担当者と人事部の連携をすることで、より迅速に対応できるようにしましょう。
相談を受けた後は事実確認をしたうえで、被害者には必要に応じて休暇を与える、補償をするといった対応をします。
同時に、加害者側にも配置換えや懲戒処分などの措置を行わなければなりません。
被害を受けた従業員だけではなく、加害者側のプライバシーの保護も必要です。
パワハラをしたからといって、加害者側だけプライバシーを守らなくても良いというわけではありません。
不利益な取り扱いはしないように心がける必要があります。

ほかにも、パワハラ以外のハラスメントに関する相談窓口と一元的に対応する体制作りも重要です。
再発防止のために、改めて自社におけるパワハラ防止の方針の周知もしたほうが良いでしょう。

企業側が防止すべきパワハラの範囲

パワハラの対象になるのは社内だけであると考えられがちですが、実際には社外で業務を行っている場合についても対象となります。
これは「職場」が「雇用されている従業員が業務を遂行する場所」を指しているからです。
例をあげると、取引先に上司と足を運んだ際に、謙遜以上に仕事の能力や人格などを否定された場合もパワハラの被害を受けたといえます。
パワハラ防止法では対象となる時間に関する制限もありません。
そのため、勤務外も対象です。

日本の企業ではコミュニケーションを目的とした勤務後の飲み会も頻繁に行われています。
飲み会は業務ではないので、必ず参加しなければならないという強制力もないのです。
ただ、上司からの強引な誘いがあった場合に、断ることができる部下は多くはないでしょう。
そのようなケースもパワハラになる可能性があります。

パワハラの対象者は正社員のほか、パートやアルバイト、派遣社員、契約社員など雇用されている従業員すべてです。
派遣社員の場合は、派遣会社に登録し、派遣先で勤務をしますが、このようなケースでは派遣会社と派遣先の会社両方がパワハラに関する対処をしなければなりません。
ただ、業務委託をする個人事業主やインターンシップ中の学生は対象外です。

パワハラが離職の原因となる場合もあることから、自社の業績悪化や評価の低下につながる可能性もあります。
パワハラの事実を訴える勇気が出せない従業員がいないとは限りません。
把握しきれていないものがある可能性も考慮し、しっかりと体制を整えましょう。

従業員が定着・活躍できる組織を作ろう

今回は、2019年5月に成立した「パワハラ防止法」について制度の内容や開始時期、どのような対策をするべきなのかについて紹介しました。
企業は絶対に守らなければならないものですし、従業員の定着や活躍に大きく関わってくるものですので、しっかりと対策を行いましょう。

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