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物流業界が人手不足の原因や背景、人手確保の対策を紹介

物流業界が人手不足の原因や背景、人手確保の対策を紹介

物流業界は、物流需要拡大の一方で、2024年問題などによって人手不足が深刻化しています。
物流業界は対策を実施し、人手不足の問題を解決することが求められています。
今回は、物流業界の人手不足の原因や背景、具体的な対策を紹介します。

物流業界を取り巻く現状

近年、物流業界では人手不足がますます深刻化しており、解決すべき問題の一つとなっています。
厚生労働省の一般職業紹介状況によると、「輸送・機械運転従事者」の有効求人倍率は2.15倍、そのうち「自動車運転従事者」は2.56倍でした。
有効求人倍率とは、求職者一人当たりの求人数を表す指標です。1倍より倍率が大きいほど求職者よりも求人数が多い状況となり、働き手が足りない状況を表します。
全産業の有効求人倍率は1.11倍ということから、物流業界は他の産業に比べて特に働き手が足りないことがわかります。
また、帝国データバンクの調査によると、人手不足によって倒産した物流会社は全体の6%に上りました。
件数で見ると前年の20件から39件と約2倍に増えており、物流業界では今後も人手不足による倒産が相次ぐと予測されます。

物流業界のドライバーの人数

全日本トラック協会の資料によると、2022年時点でトラック運送事業に従事する就業者数は約201万人、そのうち輸送・機械運転従事者は約86万人でした。
2010年からの推移を見てもほぼ横ばいですが、近年増加する宅配需要に対してドライバーの人数は足りていません。
株式会社NX総合研究所の資料によると、2020年度時点でトラックドライバーは4万人以上も不足しており、2030年度には約5倍の21万人以上不足する見込みです。
資料では需要量が増える一方、供給量は減ると予測されており、このままではドライバー不足のまま宅配需要が増え続けるといわれています。

物流業界における人手不足の原因

物流業界は労働条件の悪さに加え、少子高齢化や宅配需要の増加により人手不足が深刻化しています。
ここでは、物流業界が人手不足に陥っている原因を紹介します。

働き手の高齢化

厚生労働省が公表しているデータによると、2021年時点のドライバーの平均年齢は大型トラックで49.9歳、中小型トラックで47.4歳となっています。
これは全産業の平均年齢の43.4歳よりも高く、平均年齢は年々上がる傾向です。
また、ドライバーのうち45〜59歳の割合は45.3%、29歳以下の割合はわずか10.0%と他の産業に比べて高齢化が進んでいます。
さらに、厚生労働省の雇用動向調査によると、2023年の運輸業・郵便業の入職率は10.1%でした。
これは全産業平均の入職率の16.4%と比べて低く、人材の採用が進んでいないと考えられます。
特に、物流業界では配送ルートの記憶や運転技術が必要になるため、長年ドライバーとして働いているベテランに依存する傾向があります。
その結果、ベテランにばかり業務の知識やノウハウが蓄積してしまい、新たな人材確保が困難になってしまいます。

労働力人口の減少

日本では少子高齢化により労働力人口が減少しています。
労働力人口とは、15歳以上の就業者と完全失業者を合計した人口のことです。
完全失業者とは、就業していないが1週間以内に求職活動を行っており、すぐに就業できる者を指します。
労働政策研究・研修機構によると、労働力人口は2022年の6,902万人から2030年には6,556万人、2040年には6,002万人にまで減少する見込みです。
労働力人口が減少すると必然的に物流業界で働く人も減少してしまうため、人手不足に陥りやすくなるでしょう。
特に、他業種に比べて働き手の高齢化が進んでいる物流業界は今後さらに若手の人材確保が難しくなると予測されます。

給与が低い

給与が低いことも物流業界が人手不足に陥っている原因の一つです。
厚生労働省が公表しているデータによると、2021年時点の平均年間所得額は大型トラックドライバーが463万円、中小型トラックドライバーが431万円でした。
これは全産業平均の489万円と比べて低い金額です。
2014年からの推移を見てみるとドライバーの所得は上昇傾向にありますが、全産業平均にはいまだ到達していません。
物流業界では20代・30代のうちは他業種と同程度以上の給与が支払われますが、40代以上になると給与が他業種の平均を下回ってしまいます。
40代になると老後を見据えて収入を増やしたいと考える人が増えるほか、子どもがいる場合は中学・高校・大学へと進学するため、教育費の負担も大きくなるでしょう。
こうした変化に応えられなかった結果、30代後半〜50代のドライバーの離職につながり、人手不足に陥っています。
給与が低い要因として多重下請け構造が挙げられます。多重下請け構造とは、受注会社から業務の一部を委託された下請け会社がさらに別の会社に委託する構造のことです。
多重下請け構造では下請け手数料が余分にかかってしまうため、トラックドライバーに支払われる金額が減ってしまいます。

長時間労働が多い

物流業界では残業時間が長く、労働時間が長くなる傾向があります。
厚生労働省が公表しているデータによると、2021年時点の平均年間労働時間は大型トラックドライバーが2,544時間、中小型トラックドライバーが2,484時間でした。
これは全産業平均の2,112時間に比べて長い時間です。2014年からの推移を見ても労働時間は横ばい傾向にあり、労働環境が改善されていないことがわかります。
長時間労働は、仕事と私生活のバランスを重視する若年層にとっても体力が衰えてくる中高年層にとっても厳しいものです。
そのため、就職先の候補から外されたり離職されたりする原因となっています。

また、今後人手不足が深刻化すると一人当たりの業務量が増え、さらに労働時間が長くなるでしょう。
労働時間が長くなる原因として、荷待ち時間が挙げられます。
荷待ち時間とは、荷物の積み下ろしのためにドライバーが待っている時間のことです。
物流施設では到着時に他のトラックが列をなして待っていることもあるため、最悪の場合4〜5時間ほど待たされることもあります。
しかし、荷待ち時間はドライバー側でコントロールできないため、労働環境が改善しにくいです。

力仕事が多い

物流の現場は商品の保管や配送や荷受けなどの力仕事が多く、肉体的に大きな負担がかかります。
体力に自信の無い人や力の無い人にとっては厳しい仕事になるため、その分働き手が限定されてしまうでしょう。
特に、トラックドライバーは全産業の平均に比べて女性の割合が少ない傾向です。
厚生労働省が公表しているデータによると、宅配便やトラック運送などの道路貨物運送業に占める女性の割合は20.1%でした。
これは全産業平均の44.7%に比べて半分以下の割合です。
多様な人材が働きやすい環境を作るには、力仕事をサポートする取り組みを進めなければなりません。

宅配需要の増加

近年、インターネットショッピングやフリマアプリなどECサイトの需要拡大により、宅配便の取扱個数は増加傾向にあります。
宅配便の取扱個数の推移は以下の通りです。

 

宅配便取扱個数
2018年 43億700万個
2019年 43億2300万個
2020年 48億3600万個
2021年 49億5300万個
2022年 50億600万個

宅配需要の増加に伴い、トラックドライバーや倉庫作業員の一人当たりの業務負担が大きくなっています。
宅配では、基本的に一つの配送先に少量の荷物を輸送する小口配送が一般的です。
しかし、小口配送は一つの配送先に大量の荷物を輸送する大口配送に比べて配送回数が増えるため、配送効率が悪くドライバーに負担がかかってしまいます。
すでに多くの企業で人手不足に陥っている中、業務量が増加すると物流にも深刻な影響を及ぼすかもしれません。
また、宅配便の取扱個数の増加による再配達の多さも問題です。
国土交通省の調査によると、2024年4月の宅配便の再配達率は約10.4%でした。
1割に上る再配達を労働力に換算すると年間約6万人分に相当するといわれており、物流現場に大きな負担を与えています。

物流業界のさらなる人手不足が危惧される2024年問題とは?

2024年問題とは、働き方改革関連法の時間外労働の上限規制により労働時間が制限されることで生じる問題です。
働き方改革関連法の時間外労働の上限規制は2019年4月から大企業で、2020年4月から中小企業で順次施行されました。
しかし、自動車運転の業務や建設事業などではこの規制が5年間猶予されており、2024年4月からの適用となっています。
2024年4月以降にこれらの業種で適用される年間時間外労働時間の上限は960時間です。
この上限規制により、ドライバー一人当たりの走行距離が短くなり、長距離の運送ができなくなる恐れがあります。
これにより、企業の売上減少や運賃の値上げなどの影響が出るでしょう。

また、労働時間が短くなると時間外手当が減ってしまうため、元々他業種に比べて給与が低いドライバーの収入がさらに減少してしまいます。
これにより、人手不足は更に加速するでしょう。
さらに、今後他業種の年間時間外労働時間の720時間と同じレベルに引き下げられる恐れもあります。
物流事業を行う企業は労働環境や労働条件を見直し、働き方改革関連法へ迅速に対応しなければなりません。

物流業界の人手不足を軽減するための対策

ここでは、人手不足を解消するための対策を紹介します。

物流システム・配送管理システムの導入

物流業務は人の手と目をフル活用するため、どうしても現場の負担が大きくなります。
特に、荷役と呼ばれる運搬や仕分けやピッキングなど保管や出庫に関わる作業は見落としや記入漏れが起きやすく、業務効率が低下してしまうという問題がありました。
こうした問題の解決には、物流システムの導入が有効になります。
物流システムとは、物流における一連の工程を効率的に管理するシステムです。
導入することで、輸送・保管・荷役・包装・流通加工などさまざまな物流の基本活動を包括的に管理でき、業務効率の改善につながります。
業務品質の均一化にもつながるため、人員配置も簡単になるでしょう。

また、配送管理システムを導入することで配送業務を効率化できます。
配送管理システムとは、出荷から配送までの工程を管理するシステムです。
納品先や納品時間や物量などを入力するだけで、作業効率やコスト面で最適な配車や配送ルートを作成できます。
また、各トラックの現在地や積んでいる荷物の量や燃料消費量などをリアルタイムで確認できるため、ドライバーに適切な指示を送れるようになるでしょう。
運賃計算や請求書の発行もできるため、経理業務も効率化できます。ただし、導入には初期費用や運用費用がかかることに注意です。

物流ロボットの活用

ピッキングや仕分けや搬送などの業務を物流ロボットで自動化することで、少ない人員でも多くの荷物に対応できるようになります。
また、物流ロボットであれば人間よりも正確に作業をこなせるため、作業後の確認やミスの修正などの手間も省けるでしょう。
物流ロボットには、決められたルートを走って搬送を助けるAGV(無人搬送車)や周囲の人間や物を検知して走行するAMR(自律走行搬送ロボット)などがあります。
物流システムや配送管理システムと同様、導入には初期費用や運用費用がかかることに注意です。

共同配送の実施

共同配送とは、複数の物流事業者が協力して一緒の車両で荷物を同じ配送先に運ぶことです。
共同配送を実施することで、配送先に向かうトラックやドライバーの数を削減できます。
特に、毎日配送される日用品や形が統一されている医薬品は軽量かつ少量のものが多いため、共同配送に向いているでしょう。
また、食料品を共同配送すれば冷蔵や冷凍トラックを効率的に稼働できるため、燃料費を削減できます。
ただし、共同配送の実施には企業間の協力やシステムの共有が必要です。

荷受け待ち時間の軽減

トラックドライバーの長時間労働の原因となる荷待ち時間の軽減も不可欠です。
具体的にはトラック予約受付システムを導入するとよいでしょう。
トラック予約受付システムを使って荷役時間を予約することで、トラックの到着時間が事前に予測できるようになり、荷積みや荷卸しの準備を効率的に行えるようになります。
また、トラックの到着が分散されるため、トラックドライバーの荷待ち時間が大幅に減少するでしょう。
実際にトラック予約受付システムの導入により、トラック一台当たりの平均待機時間を約70%削減できたという報告もあります。

労働条件の改善

労働条件を改善して従業員の生産性の低下や早期離職を防ぐことも大切です。
具体的には、時短勤務やリモートワークなど多様な働き方の導入や社内託児所の設置が挙げられます。
これにより、育児や介護などの事情を抱えている人でも働きやすい環境になります。

給与水準の見直し

給与水準を見直し、他業種に見劣りしないレベルに引き上げることも重要です。
給与を引き上げる具体的な対策として、荷待ちや荷役など輸送以外の業務に対する報酬やボーナスの支給や定期昇給の実施などが挙げられます。
給与を引き上げる際は、運賃の値上げ交渉も同時に行って資金を調達しましょう。

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今回は、物流業界の人手不足の原因や背景、具体的な対策を紹介しました。
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