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保育士の人手不足の原因は?具体的な対策、企業事例を紹介
少子高齢化で子供の数は減っていますが、同様に若い世代の保育士の数も減っており、採用難やスタッフの離職などに伴い、人手不足に陥っている保育園も少なくありません。
待機児童問題という言葉を聞くように、共働き世帯の増加などで保育園の需要は大きくなっており、保育士の人手不足状態は続いています。
今回は、保育士の人手不足の原因や具体的な対策、企業事例などを紹介します。
もくじ
保育士の人手不足の状況
保育士の人数は全国的に不足しており、保育士の有効求人倍率は3倍以上に達しているとの報告があります。
このような状況のなかで、特に深刻な問題となっているのが「待機児童問題」です。
待機児童とは、保育園の利用申し込みを行い、入所要件を満たしているにもかかわらず、保育園を利用できない児童を指します。
現在は、認可外保育園や認定こども園の増加、さらに新型コロナウイルスの影響で利用を控える家庭が増えた結果、約86.7%の市区町村で待機児童が解消されています。
2020年(令和2年)4月時点で12,439人いた待機児童は、2023年(令和5年)4月時点で2,680人とかなり減少しました。
これにより、待機児童問題は現在解決に向かっていることがわかります。
しかし、保育士資格を取得しても、保育園に就職する人数は約半数です。
さらに、人手不足が原因で拘束時間が長くなり、休暇が取りにくくなっているため、労働環境への不満が保育士の人手不足をさらに悪化させています。
【関連記事】保育士の離職率の現状と理由、離職率を下げるための対策を紹介
保育士の有効求人倍率
2024年1月時点の保育士の有効求人倍率は、3.54倍です。
数年は2〜3倍で推移しており、保育士一人に対して2〜3件の求人があります。
また、保育士同様に福祉サービスに関わる「保健医療サービス職業従事者」の有効求人倍率は2.92倍、「介護サービス職業従事者」の有効求人倍率は3.35倍です。
同時期の全職種平均の有効求人倍率は、1.35倍となっており、比較すると保育士は高い倍率であることがわかります。
保育士の離職率
厚生労働省が発表した調査データによると、保育士の離職率は9.3%です。
保育士として勤務している人は全国で64.5万人*4であるため、毎年約6万人が保育士を辞めていることになります。
下記では、公立保育園や私立保育園、幼稚園教諭の離職率を紹介します。
施設の種類 | 離職率 |
公立保育園 | 5.9% |
私立保育園 | 10.7% |
幼稚園教諭 | 10.6% |
公立保育園で勤務する保育士は地方公務員であるため、給与面が安定しており、離職率が低い要因であると考えられます。
一方、私立保育園で勤務する保育士は、園によって保育方針や待遇が異なるため、離職率がやや高めです。
幼稚園教諭の離職率は、保育士の離職率と大きく変わりません。
しかし、平均勤続年数が10. 5年(保育士は7. 8年)であることから、保育士よりも長期間勤務する割合は多いといえます。
【関連記事】企業内保育所とは?導入メリットや大手などでの導入事例を紹介
保育士の人手不足に陥っている背景
少子高齢化による現役世代の減少や、離職者が多いことから、保育士の人手不足が加速しています。
ここでは、保育士の人手不足に陥っている背景を紹介します。
少子高齢化に伴う現役世代の減少
近年では、少子高齢化に伴い、1995年から日本の生産年齢人口(15〜64歳)が減少し続けています。
生産年齢人口が減少すると、保育士に限らずあらゆる職業の労働者が不足し、労働環境の悪化や経済成長の停滞を招く恐れがあります。
また、労働力が不足するなか、保育士の労働環境までも悪化していると「保育士になりたい」と考える現役世代も減少してしまうでしょう。
結果、保育士の人手不足に拍車がかかり、ますます働きづらい環境となる悪循環に陥ってしまいます。
労働条件や労働環境が悪いことによる離職者が多い
保育士の労働条件や労働環境が悪いことによって、多くの離職者が出ています。
給与の低さや人間関係の悩み、残業の多さなどは、保育士のストレスを増加させ離職せざるを得ない状況になりかねません。
これらの労働条件は、他の保育園に移っても根本的な解決にならないことが多々あり、保育士自体を辞めたいと考える人も少なくありません。
また、結婚や出産を機に保育士を退職し、復帰しようとしても、労働条件が悪ければ子どもを育てながら働くことは難しいでしょう。
他業界に比べて採用難易度が高い
他の業界に比べて、保育士として働くには保育士資格が必要なため、採用難易度が高い傾向にあります。
保育士の資格を取得する方法は、下記の通りです。
- 厚生労働大臣が指定する「指定保育士養成施設」という、学校その他の施設(大学・短大・専門学校など)で学んで卒業をする。
卒業することで、保育士資格を取得できる。 - 年2回実施される保育士試験を受験し、合格する。
指定保育士養成施設以外の学校の卒業者や社会人でも資格取得を目指すことができる。
令和5年度の保育士試験の合格率は26.9%と、他の国家資格と比較するとやや低めです。
また、試験では9科目全ての6割以上を得点する必要があるため、難易度が高いといわれています。
試験の9科目は以下の通りです。
- 保育原理
- 教育原理
- 社会的養護
- 子ども家庭福祉
- 社会福祉
- 保育の心理学
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
資格取得後、各都道府県の保育士登録簿に登録することで、保育士として働くことができます。
【関連記事】人手不足に悩む業界はどこ?現状や背景、解決策などを紹介
保育士の人手不足の原因
続いて、保育士の人手不足の原因を見てみましょう。
人手不足の原因には、給与や待遇、残業時間の長さへの不満などが挙げられます。
給与や待遇への不満
保育士は、責任の重さに比べて給与が安く、昇給も難しい職業の一つです。
厚生労働省の「令和4年度賃金構造基本統計調査」によると、全職種の平均月収が約31万円に対し、保育士の平均月収は約26万円程です。
国は、この状況を少しでも改善するため、2022年2月〜9月の期間、月額平均9,000円(月収の3%程度)の引き上げを実施します。
しかし、公定価格の見直しにより、2022年10月以降も賃金の引き上げを継続することとなりました。
なお、賃金の引き上げがされるのは、基本的に認可保育園に勤務する保育士です。
そのため、手当が行き届かない保育士は、業務量と給与が見合わず不満を抱える方が多いでしょう。
残業時間が長いことへの不満
残業時間が長いことへの不満も、保育士の人手不足につながっています。
厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の残業時間の平均は1か月あたり4時間です。
しかし、この残業時間は残業として処理された時間をあらわすため、残業としてカウントしないサービス残業は含まれていません。
各種メディアのアンケートによると、1日あたり1〜2時間の残業から、月に最大60時間残業をしているケースもあります。
特に、発表会・運動会などのイベントや季節の行事などで忙しいときは、制作物の準備に時間がかかり、残業の大きな要因となっています。
希望通りに休みを取りづらい
希望通りに休みを取りづらいことも、保育士が人手不足に陥る原因の一つでしょう。
保育士の勤務形態は、週休二日制(4週8休)や完全週休二日制が一般的です。
しかし、土曜日も子どもを預かる保育園は多くあるため、土曜日・日曜日と続けて休みを取ることは難しいといえます。
また「人手が不足している」「業務量が多い」といった理由で、事情があっても休みが取れないケースがあります。
十分に休息が取れないことや、希望通りの休みが取りづらい状況は、保育士にとって大きな負担となるでしょう。
職場の人間関係の問題
職場の人間関係の問題も、保育士の人手不足の原因となっています。
保育士の勤務環境は、閉鎖的で同性の職員が多くいる職場です。
加えて、子どもを預かる責任の重さや人手不足により、保育士一人ひとりの負担が大きくなります。
そのため、ストレスがたまりやすく、それが人間関係の問題が発生しやすい原因ともなっています。
また、先輩保育士と意見が合わなかったり、度を超えた陰口や叱責を受けたりするケースもあります。
東京都福祉保健局「東京都保育士実態調査」によると、保育士の退職理由で一番多かった回答が「職場の人間関係」でした。
なお、直接的にきつい言葉を言われなかったとしても、職場の雰囲気の悪化が原因で保育士を退職する人もいます。
命を預かる責任感や保護者対応などへの心身の健康への負担
保育士の人手不足の原因には、責任の重さや保護者対応などから心身に負担がかかることが挙げられます。
保育園では、子どもが安全に過ごせるように、環境に配慮しながら働く必要があります。
例えば、遊具が故障していないか点検したり、玩具を誤飲する危険性がないか確認したりするなど、子どもに合わせた安全管理が重要です。
また、子どもが体調不良になったりけがをしたりした際は、子どもへ対応するだけでなく、保護者への連絡対応も必要になります。
近年、保育事故に関する報道が多くあり、精神面の負担が大きくかかることを考えて、保育士という職業を選択しない人もいます。
「命を預かる責任が重い職場で働ける自信がない」という人も少なくないです。
【関連記事】地方における人手不足の現状や原因、対策方法を紹介
保育士の人手不足の具体的な対策
ここでは、保育士の人手不足の具体的な対策を紹介します。
対策には、給与や福利厚生を充実させたり、ICTの導入により業務を自動化させたりする方法があります。
給与や福利厚生の充実
給与アップや福利厚生の充実は、人手不足の解消やモチベーションの向上につながります。
保育士は、保護者の対応や保育計画の作成など、気を遣う業務も多くあります。
子どもを預かる責任の重い業務である一方、保育士の給与は高くありません。
その背景としては、基本的に保育園は福祉施設であり、収入を自由に設定できないため、利益は制限されています。
その結果、人件費に充てられる金額は限られ、保育士の給与が低くなってしまいます。
対策として、業務内容と給与のギャップを減らすため、基本給アップや福利厚生の充実が求められるでしょう。
残業時間の長さの緩和
残業時間の長さを緩和するといった労働条件の見直しは、保育士の人手不足対策に有効です。
保育園では、年間を通してさまざまなイベントや行事が開催されますが、その準備のために残業をしたり仕事を持ち帰ったりするケースが多くあります。
対策の一つとして、イベントの頻度や規模の見直しなどを実施し、保育士の残業時間を短縮させることが挙げられます。
チームでの分担や、外部の協力を得ることで、業務の負担を軽減することが可能です。
労働条件の改善は、保育士の職業としての魅力を高めることにもつながります。
結果として、人手不足解消にもつながるでしょう。
風通しの良い職場環境作り
保育士の人手不足の対策には、働きやすい風通しの良い職場環境を作ることが大切です。
近年、保育士同士のコミュニケーションが大切な保育現場では、人間関係の悩みや不満の多さが問題となっています。
対策として、悩んでいたらすぐに先輩や同僚に相談できる環境や、良い事に感謝をする・悪い事を指摘し合えるなどの信頼関係を築くことが重要です。
また、日頃からのコミュニケーションやハラスメント対策に加えて、相談窓口の設置や定期面談なども実施し、働きやすい労働環境を作ることが求められます。
ICTの導入による業務の自動化・効率化
ICTの導入により、業務を自動化・効率化することも、保育士の業務負担が軽減し人手不足の対策になります。
ICTとは、コンピューターを使用した通信や情報処理に関する技術の総称です。
アプリやツール、AIといったICT技術を導入すると、事務作業の効率アップが可能になります。
例えば、パソコンや手書きで作成していた書類をテンプレート化することで、入力の手間が省け、時間短縮やミスの削減につながります。
また、保育士同士の情報共有や保護者への連絡もスムーズになるため、コミュニケーションが円滑になるでしょう。
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保育士の人手不足対策でTHANKS GIFTを活用している企業事例
ここでは、保育士の人手不足対策でTHANKS GIFTを活用している企業事例を紹介します。
株式会社ココロラボ
株式会社ココロラボでは、人材の定着率に危機感を覚えていました。
世間でES(従業員満足度)が重視されていると耳にし、情報共有の強化やコミュニケーションの活性化、称賛の文化を育むことで定着率が向上するのではないかと考えます。
当時、社内活性化ツールが登場したことを受け「やってみよう」との思いからTHANKS GIFTを導入しました。
THANKS GIFTの導入後は「ありがとう」の声かけを習慣化させるよう、喜びを共有したり業務以外の出来事を共有したりするように職員全員が心がけます。
その結果、コミュニケーションや情報の可視化により、定着率が着実に向上しました。
株式会社H.Eグループ
株式会社H.Eグループは、福祉・保育事業や太陽光発電事業、不動産事業などさまざまな事業を展開している企業です。
体制変更に伴い、福利厚生の一環としてTHANKS GIFTを導入しました。
THANKS GIFTの導入後は、全事業の従業員がワンフロアで勤務していますが、所属会社に限らずサンクスカードをやり取りしています。
福祉・保育スタッフや支店勤務従業員など勤務地の違う従業員同士でも、THANKS GIFTを通して円滑なコミュニケーションを取れるようになりました。
おすすめのエンゲージメント向上ツール「THANKS GIFT」
THANKS GIFT(サンクスギフト)は、感謝を贈り合うことで社内コミュニケーションを活性化させ、社内文化を醸成でき組織や社内の生産性向上、エンゲージメント向上に寄与するツールです。
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